その日、その時は、誰も知らない。・・そして、洪水が襲ってきて一人残らずさらうまで、何も気が付かなかった。・・だから、目を覚ましていなさい (マタイ 24:36-42)
暗い未来を明るく生きる 大友克洋『アキラ』から
40年近く前に描かれた作品です。私が高校生の頃には、この作品を初めとして、いくつもの作品が話題となり、「大友克洋ブーム」が起こっていました。多くの漫画家さんが彼の影響を受けたでしょう。今作は今も版を重ね、今も書店で堂々と売られています。装丁は古さを全く感じさせません。久しぶりに中身を読んでみました。今見ても色あせないどころか、いまだにこれを超える作品は無いのではないかと思わせる程の質の高さです。高度な科学的考察を含むリアルな設定、序盤からぐいぐい読者を引き込むストーリー、そして作画!とにかく素晴らしい!一コマ一コマが、そのまま一つの絵画作品になりそうなほどの美しさです。目の大きさや体の比率を、いわゆる「マンガ的」に誇張することなく、けれども大人向けの「劇画」のような深刻さでもなく、現実と虚構がちょうど良い割合で混ざり合った人物画、とことんまで細かい線で埋め尽くしたかと思えば、虚空に人物が立つかのように白い部分を大胆に残す背景、もちろん配置や視点、コマの大きさなども、工夫に工夫が重ねられています。ページを繰るごとにため息をつくほどの美しい作画です。 舞台は近未来、第三次世界大戦を経て荒廃した「ネオ東京」を舞台に、主人公たちが偶然出会った「子ども」を通して、莫大な力を持つ超能力者たちを巡る様々な国家やグループの争いに巻き込まれていく・・というSFです。近未来とは言え設定は「2020年」なので、現在の状況と対比してしまいます。現在も、この漫画と同じく大変暗くて、今後の展望が見えにくい時代です。けれども、この漫画では、登場人物が、やたらと元気なのです。暗い状況の中でも、暗さをものともしない明るさがあるのです。現実の私たちは、状況に合わせるかのように、私達自身も暗くなっているような気がします。諦めムードと不安や心配で、胸の中がいっぱいになっているように思います。 聖書でも、暗い未来を描くことがあります。けれども聖書では、暗い未来を見据えながら、日常の信仰生活をしっかりと生きることを勧めています。未来が、明るかろうと暗かろうと、私たちのやることは変わらないのです。自分のすべきことを行い、人を愛し、みんなのために祈るのです。どんなに未来が暗くても、神様の愛は変わりません。