初めての子どもが妻のおなかに宿った、と聞いた時、私は嬉しさの余り天にも昇る気分になりました。私の知人は同じ経験をしたとき「もう死んでもいい」と思ったそうです。気持ちは分かります。不思議なものです。まだ顔も見ていない赤ちゃんが、これほど私を喜ばせるとは。この世で何の力も持たない、小さくか弱い存在が、大の大人をして「命を捨てても良い」とまで思わせるとは。命というものの力強さを思います。神の国の神秘は、このような経験から解き明かされていくのかもしれません。私にとって何より大切で、掛け替えがないもの、自分の全てを捨てても良いとまで思えるほど喜びに満ちあふれたもの、それが神の国なのかもしれません。
京都聖マリア教会