2020年7月1日水曜日

あなたがたは悲しむが、その悲しみは喜びに変わる。(ヨハネ 16:20)

変わってゆく   カミュ『ペスト』、小松左京『復活の日』から


「自粛」生活で、思いがけずデスクワークの時間がたっぷりとれてしまいました。この機会に読書をしようと思い立ち、この二冊を手に取りました。人間の不条理を見つめ続けたカミュと、日本のSF小説の草分けである小松左京の作品です。書店でも良く売れていると聞きます。いずれも、感染症が広がってしまい、多くの人々が苦しみ、亡くなっていく世界で、懸命にもがき、自分の使命を果たそうとする人々の物語です。いずれも架空の物語ですが、外出自粛、医療現場の混乱、ワクチン研究等々、今の世界の状況と、とてもよく合致しており、驚かされます。どこからこれだけの知識を得たのだろうと思うぐらい、医療や社会体制の詳細な情報が記されています。

 小説の中では、人々の変わっていく姿が、丁寧に描かれていました。人々は、未曽有の苦しみの中で、けれどもみんなで助け合い、支え合い、人々の苦しみに敏感になり、謙虚になりました。そして事態が収束した後、新たな人間性をもって歩みだしていったのです。

 私たちはまだ、大きな混乱と不安の渦中にいます。まだまだ用心しなければなりません。私たちは、できるだけ日常の生活を変えずに生活しようとしています。けれども、目に見えるもの以上に、私たちの心は大きな変化を経験しています。緊張や不安は、私たちの思っている以上に私たちの心に重くのしかかっていると思います。特に、子どもたちの心は、深く傷ついていると思います。大人は、子どもたちの心に、優しく温かく、寄り添わなければなりません。

 私たちの世界は、否応なく変わります。私たちは事態の収束に向けて努力しますが、「元通り」になることはありません。私たちは新たな世界を作ってゆくのです。私たちは世界を、少しでも良い方向へとけていかなければなりません。そして私たちには、その力があります。イエス様の十字架と復活は、人類を罪から愛へと変えてくださいました。神様は、私たちの悲しみを喜びに変える力を、私たちに与えて下さいました。私たちは、誰かを喜びに変える力を持っているのです。

どちらの小説も、未来に対する希望で終わっています。私たちはきっと、明るい未来を造り出していくことができるでしょう。


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